「離婚するときに家を売ったほうが良い?」
「離婚で家を売ったお金はどうなるの?」
離婚時の家の売却は、財産分与や住宅ローンの処理、売却のタイミングなど、複雑な手続きを伴います。
売却の進め方を誤ると、財産分与の請求権を失ったり、住宅ローンの負担が増えたりする可能性があります。
特に、離婚成立後2年以内に売却しないと財産分与の請求権を失うため、早めの対応が必要です。
本記事では、離婚時の家の売却の流れや財産分与の方法、税金の負担、売れない場合の対策について詳しく解説します。
離婚時の家の売却のタイミングは?持ち家にどちらも住まない場合は売却を検討する
離婚時の家の売却は、タイミングを誤ると財産分与の権利を失う可能性があるため、慎重に検討する必要があります。
- 財産分与の請求期限があるため
→離婚が成立してから2年以内に財産分与をしないと、相手に売却益を請求できなくなる - 維持費がかかるため
→固定資産税や管理費が発生し、誰も住んでいなくても負担が続く - 売却までに時間がかかるため
→一般的に売却には3〜6か月かかるため、すぐに売れるわけではない - 市場価格の変動があるため
→市場の動きによっては、思っていたより安い価格でしか売れなくなることもある
家を持ち続けると、固定資産税や管理費がかかるだけでなく、空き家の状態が続くことで資産価値が下がることもあります。
特に、財産分与の手続きが絡む場合、売却のタイミングを誤るとトラブルになる可能性があるため、慎重に進める必要があります。
売却を決めたら、まず家の査定を依頼し、住宅ローンの残債を確認することが大事です。
売却額でローンを完済できるか、売却益をどのように分けるかを早めに決めておけば、スムーズに手続きを進められます。
離婚成立から2年以内に売却しないと財産分与の請求権を失うリスクがある
離婚時の財産分与は、離婚後2年以内に請求しなければならないと法律で決められています。
この期間を過ぎると、元配偶者に売却益を請求することができなくなります。
特に、家の名義がどちらか一方になっている場合、もう一方の元配偶者は売却代金を受け取れなくなるため、注意が必要です。
- 離婚前に売却の話を進める
できるだけ離婚協議の段階で、売却の手続きを決めておく - 離婚協議書を作成する
売却後の利益をどう分けるかを明確にし、公正証書にしておくとトラブルを防げる - 不動産業者に相談する
早めに査定を依頼し、売却のタイミングを考えておく - 財産分与の期限を意識する
期限を過ぎると請求権を失うため、スケジュールを逆算して動く。
2年以内に売却を進めなかった場合、相手が単独で家を売却し、その利益を独り占めする可能性もあります。
離婚後のトラブルを避けるためにも、早めに行動することが大事です。
参考:民法 | e-Gov 法令検索
参考:財産分与制度に関する論点の検討|法務省
離婚時の家の売却の流れについて解説
離婚時の家の売却には、複数の手続きが必要です。
順序を間違えると売却がスムーズに進まなかったり、想定よりも低い価格で手放すことになったりする可能性があります。
- 家の名義を確認する
- 住宅ローンの残債を確認する
- 不動産業者に査定を依頼する
- 売却活動を開始し、買い手を探す
家の売却は、名義の確認から始まり、ローンの残債確認、査定、売却活動といった流れで進める必要があります。
各ステップで必要な手続きを事前に把握し、スムーズに売却できるよう準備を進めていくことが大切です。
各ステップで注意すべきポイントを詳しく解説します。
家の名義の確認をする
家を売却するためには、登記簿を確認し、名義人が誰であるかを把握する必要があります。
- 共有名義の場合、財産分与の割合を決めておく
- 売却後の利益をどのように分配するかを事前に話し合う
- 名義変更が必要な場合は、司法書士に相談する
名義の状況によって、売却方法や必要な手続きが異なるため、最初に確認することが重要です。
名義の種類 | 売却時の対応 |
---|---|
単独名義(夫または妻のみ) | 名義人の同意があれば売却可能。ただし、財産分与の話し合いが必要。 |
共有名義(夫婦で所有) | 夫婦両方の同意が必要。どちらかが反対すると売却できない。 |
親族が名義人 | 所有者の同意なしでは売却できないため、事前に話し合いが必要。 |
登記簿謄本(登記事項証明書)は、法務局で取得できます。インターネットでオンライン申請も可能です。
住宅ローンの残債を確認し売却額で完済できるかどうかを検討
住宅ローンが残っている場合、売却後に残債を完済できるかを確認する必要があります。
- 銀行に問い合わせて残債証明書を取得する
- 売却価格と比較し、完済可能か確認する
- オーバーローンの場合、自己資金や売却方法を検討する
売却価格がローン残高を上回るかどうかで、売却方法が変わります。
状況 | 対応策 |
---|---|
売却価格がローン残高を上回る(アンダーローン) | 売却代金でローンを完済し、残った金額を財産分与できる。 |
売却価格がローン残高を下回る(オーバーローン) | 自己資金で不足分を補填する、または任意売却を検討する。 |
ローンが残っていると、抵当権を抹消しなければ売却できません。
売却金額で完済できない場合、金融機関と交渉し、任意売却や返済条件の見直しを検討する必要があります。
不動産業者に査定を依頼し、適正価格を把握する
家を売却する前に、不動産業者に査定を依頼し、現在の市場価格を把握します。
- 複数の不動産会社に依頼する(1社だけでは適正価格がわかりにくいため)
- 売却時期や希望価格を明確に伝える
- 査定価格と実際の売却価格は異なることを理解しておく
査定額を基準に、売却価格を決めることになります。
査定方法 | 特徴 |
---|---|
机上査定 | インターネットや電話で査定。過去の取引事例から価格を算出。 迅速だが精度は低い。 |
訪問査定 | 不動産業者が現地調査を行い、設備や周辺環境を考慮した価格を提示。 精度が高い。 |
複数社の査定結果を比較し、適正価格を把握することで、売却時の交渉を有利に進めることができます。
売却活動を開始し買い手を探す
査定が完了したら、実際に売却活動を開始します。
- 販売価格を適切に設定する(高すぎると売れにくい)
- 広告や内覧を活用してアピールする(魅力的な写真や説明を用意)
- 買い手との価格交渉に柔軟に対応する(希望価格との差がある場合、条件を調整する)
不動産業者と媒介契約を結び、広告を出して買い手を探します。
契約の種類 | 特徴 |
---|---|
専属専任媒介契約 | 1社のみに依頼。売主が自ら買い手を探すことはできないが、サポートが手厚い。 |
専任媒介契約 | 1社のみに依頼。ただし、自分で買い手を見つけることも可能。 |
一般媒介契約 | 複数の業者に依頼できる。広く買い手を探せるが、売却活動の優先度が下がる可能性あり。 |
売却が決まったら、契約書を作成し、決済と引き渡しの準備を進めます。
売却完了までにかかる期間は3〜6か月が一般的ですが、市場の状況によってはさらに長引くこともあります。
離婚後の家売却に伴う財産分与の方法について
離婚後の財産分与では、家の売却益をどのように分けるかが大きな課題になります。
家は高額な資産であり、財産分与の対象になるため、売却価格や住宅ローンの残債によって分配方法が変わります。
特に、売却価格がローン残債を上回るか下回るかで、手続きの流れが異なります。
トラブルを防ぐためにも、財産分与の基本的なルールを理解し、スムーズに手続きを進めることが大切です。
財産分与は家の売却価格を1:1の割合で行うのが一般的
財産分与は、夫婦が婚姻中に築いた財産を公平に分配する制度です。
不動産の売却益については、1:1の割合で分けるのが一般的ですが、状況によって異なる場合もあります。
- 原則として1:1で分配される
夫婦が共同で購入した家は、売却価格を均等に分けるのが基本となる - 婚姻前の財産は分与の対象外
どちらかが婚姻前に購入した家は、財産分与の対象にならない - 特別な事情がある場合は分配割合が変わる
住宅ローンの支払い負担に差がある場合や、どちらかが家に住み続ける場合は、割合を調整することがある
財産分与を行う際は、売却額やローンの状況をしっかり確認し、双方が納得できる形で分配することが重要です。
住宅ローンが残っている場合、売却額でローンを返済し残った金額を分けることが基本
家を売却する際、住宅ローンが残っているかどうかで財産分与の方法が変わります。
状況 | 対応策 |
---|---|
売却価格がローン残高を上回る(アンダーローン) | 売却益でローンを完済し、残った金額を分配する。 |
売却価格がローン残高を下回る(オーバーローン) | 不足分を自己資金で補填する、または任意売却を検討する。 |
ローンが残っている場合、売却額で完済し、残った金額を分配するのが一般的な流れです。
- 住宅ローンの残高を確認する
- 売却価格と残債を比較する
- 売却益でローンを完済する
- 残った金額を夫婦で分ける
住宅ローンの処理を誤ると、売却後に負担が残ることになるため、金融機関としっかり相談し、無理のない形で進めることが大切です。
売却前にローンの残債を確認し、売却後の手続きを明確にしておくことで、スムーズに進めることができます。
離婚時の家の売却に関するよくある質問
離婚に伴い家を売却する際には、税金や住宅ローンの処理、売却の進め方など、さまざまな疑問が生じます。
特に、財産分与による税負担や、家が売れない場合の対応については、事前に知っておくことでスムーズに手続きを進められます。
- 離婚時に家を相手に財産分与する場合、贈与税や不動産取得税は発生するか?
- 離婚時に家を売却した際に譲渡所得税が課税されるか?
- オーバーローンの家を売却する方法は?
- 離婚時の家が売れない場合の対処法は?
ここでは、よくある質問に対する具体的な回答をまとめました。
- 離婚時に家を相手に財産分与する場合、贈与税や不動産取得税は発生するか?
-
離婚による財産分与として家を譲る場合、原則として贈与税はかかりません。
財産分与は婚姻期間中に築いた財産を公平に分ける手続きとみなされるため、贈与ではなく財産の清算と扱われます。
しかし、分与の方法や価値の不均衡によっては、贈与税や不動産取得税が発生する可能性があります。
税金がかかるケースとかからないケースの違い
条件 贈与税 不動産取得税 財産分与として適正な割合で家を分けた場合 かからない かかる 一方が不当に多くの財産を受け取った場合 かかる可能性あり かかる 贈与として名義を変更した場合 かかる かかる 不動産取得税は不動産を取得した際に発生する税金であり、財産分与による取得でも支払う必要があります。
固定資産税評価額に基づいて算出されるため、取得する家の価値によって金額が異なります。
税金を最小限に抑える方法- 財産分与の割合を公平にする
- 離婚協議書を作成し、財産分与であることを明記する
- 事前に税理士に相談し、税負担を確認する
離婚時の財産分与では、贈与税のリスクを避けるためにも、公正証書の作成や専門家のアドバイスを受けながら手続きを進めることが大切です。
- 離婚時に家を売却した際に譲渡所得税が課税されるか?
-
家を売却し、利益(譲渡所得)が発生した場合、譲渡所得税がかかる可能性があります。
譲渡所得税の計算方法譲渡所得 = 売却価格 -(取得費 + 譲渡費用)
ただし、一定の条件を満たせば税負担を軽減する特例が適用されます。
状況 3,000万円特別控除 自宅を売却した場合(居住用財産) 適用可能 離婚後に長期間住んでいなかった場合 適用不可の可能性あり 賃貸に出していた家を売却した場合 適用不可 この特例を利用すると、売却益が3,000万円以下であれば譲渡所得税がかからなくなります。
ただし、適用要件があり、売却前に確認が必要です。
離婚後に家を売却する際は、譲渡所得税の負担を減らせるかどうかを事前に確認することが重要です。
- オーバーローンの家を売却する方法は?
-
オーバーローンとは、家の売却価格よりも住宅ローンの残高が上回る状態のことを指します。
この場合、売却益だけではローンを完済できないため、特別な対応が必要になります。
オーバーローンの対処方法 方法 メリット デメリット 自己資金で補填する 早期に売却が完了する まとまった資金が必要 任意売却を行う 金融機関と交渉できる 信用情報に影響する可能性あり ローンの借り換えを検討する 毎月の返済負担を軽減できる 新たな審査が必要 相手に引き継ぐ(名義変更) 家を手放さずに済む 収入条件を満たす必要がある 金融機関と相談しながら、無理のない方法を選ぶことが大切です。
オーバーローンの場合は、金融機関の許可が必要になるため、早めに相談しましょう。
- 離婚時の家が売れない場合の対処法は?
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家がなかなか売れない場合、売却価格の見直しや売却方法の変更を検討する必要があります。
理由 解決策 売却価格が高すぎる 価格を適正水準まで引き下げる 買い手が見つからない 販売チャネルを増やし、広く募集する 家の状態が悪い 修繕やクリーニングを行い、印象を良くする 離婚時の家が売れない場合、原因を特定し、適切な対策を講じることで売却を成功させることができます。
売れない場合の選択肢- 値下げ交渉を行い、早期売却を目指す
- リフォームやホームステージングを活用し、見た目を改善する
- 賃貸に出し、家賃収入を得る
- 買取業者に依頼し、即現金化する
価格の見直しや修繕、不動産買取の活用、賃貸化など、複数の選択肢を検討し、状況に応じた方法を選ぶことが大切です。
時間が経つほど維持費の負担が増えるため、早めの対応が求められます。
まとめ
離婚時の家の売却は、計画的に進めなければならない重要な手続きです。
売却のタイミングを誤ると、財産分与の権利を失ったり、住宅ローンの残債が処理できなかったりする可能性があります。
離婚成立後2年以内に売却を完了しないと、財産分与の請求権がなくなるため、早めに売却活動を開始することが必要です。
財産分与では売却益を1:1で分けるのが一般的ですが、ローン残債がある場合は売却額で完済し、残りを分配します。
売却益には譲渡所得税が課税される可能性があり、3,000万円の特別控除を活用できるか確認が必要です。
家が売れない場合は価格調整や修繕、買取の利用を検討し、維持費の負担を減らすために早めの売却を目指しましょう。