「京都の実家を相続したけど、古い町家だから売れるか不安」
「古民家ってそもそも買い手がつくの?」
そんな疑問を抱える方も少なくありません。
一方で、築年数の古さや再建築の制限などから、「売却は難しい」と感じてしまう人も多いのが実情です。
京町屋や古民家を売却する際は以下のポイントを意識しましょう。
- 京町家・古民家を専門とした不動産業者を探す
- 複数の不動産業者に査定を依頼して相場を調べる
- 補助金を利用して修繕やリフォームを行う
また、希少性の高い構造や、京都市中心部に多く残る立地の魅力もあって、買い手のニーズは高まっています。
- 希少性:建物の構造や建築技術の資料として貴重
- 立地の利便性:京都市内の中心部にあることが多く、利便性が非常に高い
近年では、宿泊施設やカフェへのリノベーション需要、空き家再生への行政支援など、京町家や古民家の市場は大きく動いているため需要も高まり、高額売却が期待できます。
本記事では、京町家・古民家を高く売却するための方法、需要が高い物件の特徴、実際の相場感や行政支援制度の活用方法までを詳しく解説します。
古民家や京町家の売却を考えている人はぜひ参考にしてください。
京町家とは

京町家とは、京都の伝統的な木造家屋のことです。
かつては明確な定義付けがされておりませんでしたが、現在では京町家条例というものが制定され、以下の条件に当てはまるものが京町家とされています。
- 昭和25年以前に建築された木造建築物であること
- 「伝統構法」と呼ばれる構造であること
- 3階建て以下
- 一戸建てあるいは長屋建て
- 平屋根
これらが必須条件であり、他にも庭や窓、吹き抜け部分など特定の形態や意匠が一つでも含まれていれば、京町家として認定されます。
詳細は京都市が運営しているホームページで確認が可能です。
京町家と古民家の違いとは?
京町家と古民家は混同されがちですが、実はその定義や建築様式には明確な違いがあります。
どちらも伝統的な木造住宅である点は共通していますが、「京町家」は京都市内を中心とした町家建築に限定されるのに対し、「古民家」はより広い意味を持つ総称です。
違いを簡単にまとめると、以下のようになります。
項目 | 京町家 | 古民家 |
---|---|---|
主な地域 | 京都市内中心(中京区・上京区など) | 全国(東北~九州まで) |
築年基準 | 昭和25年以前 | 築50年以上 |
用途 | 商家・町人住宅 | 農家・商家・庄屋など多様 |
建築様式 | 通り庭・格子・うなぎの寝床など特徴的 | 地域ごとに異なる構造(曲屋・合掌造りなど) |
景観重要性 | 景観保全地域指定されることが多い | 指定は少ない(文化財登録されるケースも) |
上記の違いを理解しておくことで、売却時の査定基準や、買取希望者のニーズの違いにも対応しやすくなります。
特に京都市内の物件を売却する場合、「京町家」であるかどうかは価格にも直結する要素です。
京町家の現状は?

京町家は京都の伝統と景観を象徴する存在として評価されている一方で、管理が難しいとされています。
- 維持費が高くつきやすい
- 空家問題で景観・防犯上の問題に発展している
2つの理由について以下で詳しく説明します。
維持費が高くつきやすい
維持費が高くつきやすいのが、京町家の大きな問題の一つです。
京町家は昭和25年以上前に建てられたものであるため、修繕や状態を維持するのに多額の費用がかかります。
木材の劣化や屋根の補修を行う際、伝統的な建材の確保や現代の建築基準に合わせるための耐震補強や防火対策が求められます。
また、京町家建造の際に用いられた工法「伝統工法」ができる業者を探す必要もあるので、よりコストが高くなりやすいです。
空家問題が景観上の問題に
京町家はコストの面から修繕や維持を放棄し、空家になることが問題になっています。
景観を損なうのはもちろん、放置されたままでは建物自体の劣化が進み、倒壊の危険性も高まります。
そうなると近隣に被害が及ぶ他、空家に不審者が住み着き治安悪化の要因にもなってしまいます。
京町家の需要は年々増加している
維持費や空家問題のある京町家ですが、京町家自体の価値は非常に高く、需要は年々増加しています。
その理由が、上でも説明した「建物の希少性」と「立地の利便性」です。
ここでは、京町家の持つ希少性と立地の利便性についてご説明しましょう。
建物の希少性が高まっている

京町家はその独特な構造と歴史的背景から希少価値が高く、特に観光地としての人気が高いです。
特に、江戸時代頃に建てられた京町家は、歴史的な価値が極めて高い物件です。
そんな京都市内にある京町家の数は、減少傾向にあります。
年数 | 軒数 |
---|---|
2009年 | 4万7,735軒 |
2017年 | 4万416軒 |
京町家は、年間約800軒(1.7%)のペースで消失しており、50年後には0軒になるとも言われています。
加えて、古民家の空き家問題を抱える京都では、不要な京町家が毎年解体されて数が減っているので、京町家は年々希少性が高くなり、更に需要が高まりやすくなるのです。
参考:全宅連│京町家の多彩な特長を生かし、 さまざまな活用方法で再生する
立地の利便性が高い傾向にある
京町家は立地の利便性が高い傾向にあります。
京町家は京都市内の中心部に多く位置しており、交通の便が良いことが多いです。
このため、生活の利便性や商業利用の観点からも、非常に魅力的な物件です。
歴史に興味のある人や外国人観光客にとって非常に人気が高く、利便性を活用して観光客向けの宿泊施設やカフェとして利用される傾向にあります。
京町家・古民家が売れると言える3つの理由
京町家や古民家は、近年ではリノベーションや宿泊施設への活用をはじめ、文化的価値への再評価が進み、投資対象としても注目されています。
- リノベーションや宿泊業への再利用需要が高まっている
- 地域や行政による保存支援が進んでいる
- 投資対象やセカンドハウスとしての価値も注目されている
ここでは、実際に売れる理由を3つの視点から解説します。
リノベーションや宿泊業への再利用需要が高まっている
京町家や古民家は、現代的な生活スタイルに合わせてリノベーションすることで、新たな資産価値を生み出せる物件として注目を集めています。
特に京都では、観光客向けの町家宿やカフェ、ギャラリーとして再活用される事例が増加中です。
伝統建築の雰囲気を活かしながら機能性を加える改修は、国内外の利用者に高く評価されており、再販目的での購入希望者も少なくありません。
そのため、修繕が可能な状態であれば、買取業者や投資家からの需要が高く、「活かせる物件」として売却のチャンスが広がっています。
地域や行政による保存支援が進んでいる
京都市をはじめとする自治体では、京町家の保存活用を支援するための制度が数多く設けられています。
京都が推奨している支援策により、築年数が古い建物であっても、補助制度の活用で修繕費の負担を軽減できるため、買い手にとっても購入しやすい物件として注目されています。
また、指定区域内にある京町家は景観資源としての評価も高く、保存対象として買い手からの関心が集まりやすい点も魅力です。
投資対象やセカンドハウスとしての価値も注目されている
京町家や古民家は、投資対象やセカンドハウスとしてのニーズも高まりを見せています。
たとえば、宿泊施設や町家カフェとして活用するために購入する事業者のほか、週末用の別荘や趣味の拠点として購入する個人も増えています。
とくに京都の伝統文化と生活空間を両立させたい層からは、趣のある町家に快適さを加えた和モダン住宅のような形での活用も注目されています。
京町家や古民家は、居住用にとどまらない多様な使い道があることが、買い手の幅を広げ、売却しやすさにもつながっているのです。
京町家高価売却の3つのポイント
京町家の売却で高価買取を目指す場合、以下のポイントを守る必要があります。
- 京町家を専門とした不動産業者を探す
- 複数の不動産業者に査定を依頼して相場を調べる
- 補助金を利用して修繕やリフォームを行う
この3つを守らずに業者選びをした場合、高く売却できません。
ここでは、そんな高価買取のためのポイントについてご説明しましょう。
京町家を専門とした不動産業者を探す
京町家の売却を成功させるためには、京町家に詳しい不動産業者を選ぶことが重要です。
- 京都の地域密着型の業者である
- 古民家を専門に扱っている、あるいはノウハウが有ることを確認できる
- ホームページで京町家の買取実績を公表している
京町家は不動産業者に知識が求められる建物であり、取り扱いが難しいです。
建物の状態や建物そのものの価値、需要や利用方法に顧客層など、従来の建物とは違ったノウハウを有していなければなりません。
専門知識を持った業者なら適切な市場価格を提示し、最適な買い手を見つけるためのサポートを提供してくれます。
複数の不動産業者に査定を依頼して相場を調べる
複数の不動産業者に査定を依頼し、相場を把握することで、より良い条件で売却することができます。
京都の地域密着型の業者の中には、京町家を専門に扱っている業者が多いです。
業者によって顧客層が異なるため、同じ物件でも業者によって買取価格が変化するため、複数の業者に依頼することで、高価買取に繋がりやすくなります。
査定結果を比較し、信頼できる業者を選ぶことがポイントです。
補助金を利用して修繕やリフォームを行う
もし物件の状態が悪ければ、補助金を利用して建物の修繕やリフォームを行いましょう。
京町家の修繕やリフォームには補助金が利用できる場合があります。
京都市では京町家の空家問題解決のため、京町家のリフォームに補助金を出しています。
2024年度の補助金制度は、以下の通りです。
対象建築物 | 京町家条例に基づく指定地区内の京町家 | 京町家条例に基づく個別指定の京町家 |
---|---|---|
対象工事 | 外壁や屋根などの外部改修工事 電気・ガスなどの設備改修工事 | 外壁や屋根などの外部改修工事 電気・ガスなどの設備改修工事 伝統的な形態意匠の復元工事 |
補助金額 | 補助対象費用の2分の1 上限100万円 | 補助対象費用の2分の1 上限250万円 |
補助金を活用すれば安価でリフォームでき、建物の価値を高めて売却価格の引き上げが可能です。
京町家・古民家を実際に購入しているのはどんな人?
需要の高まりや売れる理由、売り方のポイントについて解説してきました。
実際に京町家や古民家を購入している人はどんな人かを紹介します。
- 宿泊施設運営会社や町家カフェ経営者
- 京町家専門の再生業者や地元の不動産投資家
- 外国人や移住希望者による指名買いも増加中
宿泊施設運営会社や町家カフェ経営者
観光都市・京都の強みを活かし、町家を宿泊施設や飲食店に転用する事業者からの需要は非常に高い傾向があります。
特にインバウンド需要の回復が進む中、京町家の持つ「和の魅力」は集客面でも有利に働くため、宿泊施設としての活用が活発です。
また、カフェやギャラリーなど小規模な飲食・文化施設として活用するケースも多く、立地と建物の雰囲気を重視した「指名買い」が発生しやすい傾向があります。
こうした事業者にとっては、外観の趣と利便性が両立する物件が特に人気です。
京町家専門の再生業者や地元の不動産投資家
京町家の再生を専門に手がける業者や、地域密着型の不動産投資家による購入も安定的に見られます。
買主は、老朽化した町家でも「文化的価値」や「立地の将来性」に着目しており、改修後に再販・賃貸運用を前提とした投資として物件を取得する傾向があります。
とくに京都では、再生された町家が市場で高値で取引される事例も多く、適切なリノベーション技術と販売ルートを持つ業者にとっては大きな商機となっています。
外国人や移住希望者による指名買いも増加中
近年では、海外からの投資家や京都への移住を希望する個人による「指名買い」も目立ち始めています。
特に外国人にとって、京町家は日本文化そのものとも言える存在であり、ステータス性や趣味性を兼ね備えた不動産として評価されています。
また、リモートワークの浸透により「都市を離れて文化的に豊かな地域で暮らしたい」と考える国内移住者の関心も高まりつつあります。
立地だけでなく町家としての佇まいや街並みに溶け込む景観を重視する傾向があります。
京町家・古民家を売却する際によくある質問
京町家や古民家の売却には独自の注意点や手続きがあります。
ここでは、売却前によく寄せられる代表的な質問とその回答を簡潔にまとめました。
- 再建築不可物件の京町家でも買取ってもらえる?
- 古くて傷んでいる家でも買い取ってもらえますか?
- 相続登記が済んでいませんが売却できますか?
- 修繕してから売った方がいいですか?
再建築不可物件の京町家でも買取ってもらえる?
再建築不可の京町家であっても、買取対象になることは十分にあります。
とくに土地の立地条件が良い場合や、建物自体に歴史的・文化的価値がある場合は、専門業者による買取が可能です。
ただし価格は建て替えができる物件と比べると下がる傾向にあるため、再建築不可物件に強い業者を選ぶことが重要です。
古くて傷んでいる家でも買い取ってもらえますか?
はい、老朽化が進んだ物件でも買取が可能です。
特に京町家や古民家は、修繕を前提に取得する再生業者や投資家によるニーズがあるため、築年数や傷み具合だけで判断されることは多くありません。
現状のまま売却できるケースも多いため、無理にリフォームを行う前に、まずは査定を受けてみるのがおすすめです。
相続登記が済んでいませんが売却できますか?
原則として、売却するには相続登記が完了している必要があります。
登記が済んでいないと所有権が不明確な状態となるため、買主への名義移転ができません。
ただし、不動産会社によっては相続登記の手続き支援も行っているため、まずは相談しながら準備を進めるとスムーズです。
修繕してから売った方がいいですか?
物件の状態によりますが、必ずしも修繕が必要とは限りません。
購入希望者が自分でリノベーションを前提に考えている場合、現状のままの方が好まれることもあります。
むしろ過度な修繕が買い手のプランと合わず、かえって評価を下げるケースもあるため、事前に不動産業者と相談したうえで判断しましょう。
まとめ
この記事では、京町家の現状や需要、高価買取の方法についてご説明しました。
京町家は希少性が高く、歴史的価値と需要が高い反面取り扱いが難しく、年々数が減少しています。
しかし、減少している今だからこそ高価買取のチャンスが生まれており、京都も補助金を出して維持のお手伝いをしてくれています。
需要が高まり続け、京都府が補助をしてくれる今こそ、不要な京町家は売却を検討しましょう。