築44年の鉄筋コンクリート造3階建テラスハウス
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2022年11月 上京区

担当者からのコメント
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担当:宮川和秀
担当:宮川和秀
「チラシを見たんや!今、おるんや!すぐ来てや!」
「けったいなオバハンやな~」と思いながら現地に向かった。
変わった建物だった。
築44年の鉄筋コンクリート造3階建テラスハウス。
初めて見るタイプの物件で、道路に対して横並びではなく、奥方向に12軒が複雑に入り組むように建っていた。パッと見は賃貸マンションに見えた。この物件は道路側一番手前。
到着して名刺を渡すや否や「いこいこ!あんたの会社いこ!話はあんたんとこでしよ!」とゆっくり査定する間も与えてくれない。
間取りも書けないまま会社へ。
「アタシ、センチュリーの大ファンやねん!アッチコッチのセンチュリーさんから手紙もようけもろうてるし!もうアンタにぜ~んぶ任すわ!大丈夫、浮気はせえへんから!死んだ弟が持ってた権利書も預けようと思ってココに持って来たんや、、、」
といった調子。
「ならば。。」と思い、売却希望価格を聞き出して媒介契約書にサインしてもらおうとしたが、
「あの家のことなんやけど、また今度、落ち着いてジックリと聞いてもらわなアカン話もあるしな。」ということで一足飛びには話を進めたくなさそうな感じだったので、とりあえずその日は、相続登記手続きのための専属の司法書士に会わせる段取りだけにとどめた。
勿論、権利書も持って帰ってもらった。
数週間後、相続登記手続が無事完了し「サー、次の段階へ。」となって再会した。
私自身はこの間、「面白い物件やな~買わせてもらえへんかな~、、」と考えていた。
正直、どこまで本気か分からなかったので自信もなかったが、
「買取りさせて頂きたいんですけど、、」とストレートにぶつけると
「ええよ!アンタの好きにしいや!」と受け入れて下さり、この家のこともたくさん説明して下さった。
訳アリみたいな言い方をされていたので、正直、心理的瑕疵の存在が怖かったが、そうではなく【先々代がどういう思いでこの家を買って、先代がこの家に住みながらどう生きたか、、】
の説明だった。
最後に、先代様がこの家に住みながら和菓子職人として打ち込み、発案したという和菓子を頂いた。鶴屋吉信の柚餅(ゆうもち)という直径1.5センチほどの餅菓子。
現在は機械化されてるが、当時は一個一個手作りで先代はとても器用に作ったらしい。
正直、あまり好きな味ではないけれど、ゆうもちが私の中に刻まれた。